映画館で映画「怪物」を観ました。
題名からはどのような映画かわからなかったのですが、是枝裕和監督の作品が好きなので観ることにしました。
自宅のベランダからビルの火災を何気ない会話をしながら母親の早織と息子の湊とで眺めていました。
火災したビルのガールズバーに担任教師の保利先生がいたと言う噂が流れました。
早織は湊の様子がおかしいことに気づきました。
保利先生から血が出るまで耳を引っ張られたり、「お前の脳は豚の脳と入れ換えられた」と言われたり、暴力を受けていると聞いた早織は学校に相談に行きました。
しかし、伏見校長は真面目に聞いてはくれませんでした。
目を合わさず、全く反応せず、感情を全く示さずに聞き流しているだけでした。
学校側からの形だけの感情のない謝罪は早織の怒りと悔しさを大きくしただけでした。
伏見校長は孫を亡くしたばかりで精神的に疲れていると他の教師から説明を受けても納得できるわけがありません。
はっきり言って早織からすると伏見校長のプライベートは我が子には関係ありません。
伏見校長は生徒よりも学校を守ることを優先に考えていました。
実際に暴力があったなんて関係ない。1人が犠牲になることで学校を守れるならそれでいいという考えでした。
孫を車で轢き殺したのは伏見校長の夫でしたが、本当は伏見校長自身が轢き殺したという噂がありました。
夫まで犠牲にしてでも学校を守りたかったのかもしれません。
「誰でも手に入るものを、幸せというのよ」と生徒に話し、人に話せないことは思いっきり楽器に息を吹き込んで音に出すように促す校長の姿は昔の生徒第一に考えていた頃の様子が目に浮かびました。
港はクラスでいじめられている男の子と仲良くなりました。
しかしそれは友情ではなく愛情でした。
その気持ちを絶対に誰にも知られてはいけない。自分の気持ちがばれないように嘘をつき、担任を退職にまで追いやりました。
学校からしたら早織はモンスターペアレント、保利先生からしたら港は問題児で伏見校長は最悪の上司。
人は守るものがあるとだれでも怪物になるということです。
登場人物それぞれ、自分に対しての怪物がいて、自分自身も誰かの怪物です。
私は介護老人保健施設(老健)で支援相談員をしています。
支援相談員も100%利用者さんやご家族の味方になることができません。
老健はリハビリ施設であるため、日常生活動作(ADL)が回復し自宅に帰れる状態になれば退所になります。
長期間入所できないことを受付時にご家族に伝え、了解を得てから入所していただいています。
ご家族との面談では各専門職が順番に利用者さんの施設での様子をお伝えします。
施設で楽しく過ごしていることがわかりご家族も笑顔で安心した様子になります。
しかし、支援相談員の私の順番になり退所の話をするとご家族の表情が一気に変わります。
「追い出すんですか?」と険しい表情、強い口調で言われることが多々あります。
ご家族からしたら私は“怪物”なのかもしれません。
私もご家族の希望通りに「いつまでもいて下さいね」と言いたいのですが、施設の役割や在宅復帰率のことがあるのでそういうわけにはいきません。
誰もが怪物になり得ると感じさせられる映画でした。
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