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“慣れ”が環境の変化に恐怖を与える「ソーシャンクの空に」

映画

介護老人保健施設は在宅復帰に向けてのリハビリ施設であるためいつかは退所しなければなりません。

利用者さんは入所当初は「早くここから出たい」とご家族に言ったり、施設職員に相談することがよくあります。

それが入所期間が長期になってくると「ずっとここにいたいわ」と言われるようになります。

長期になるにつれて環境の変化が怖くなってくるようです。

映画「ソーシャンクの空に(1994年)」

を観た時に改めて高齢者の環境の変化が恐怖になることを実感しました。

主人公ではなく愛らしいおじいさんのブルックスが印象に残りました。

主人公のアンディが刑務所に入所した頃にはすでに高齢で、長年図書係をしていました。

仮釈放されることになり、アパートと社会復帰のためにスーパーの仕事が用意されました。

自分の家を手に入れ好きなことをして生活ができるようになったのです。

しかし、ブルックスはアパートで首を吊って自殺してしまいました。

受刑者にとっての最大の願いは出所して塀の外で自由に生活することです。

しかしブルックスは違いました。

刑務所での暮らしがブルックスにとっては幸せだったのです。

「ブルックス」と名前を呼んでくれる仲間がいること、馬鹿な冗談を言い合える仲間がいることで寂しさは感じませんでした。

また、ブルックスには大切な役割がありました。

図書係としての仕事、カラスのジェイクの世話、入所してきた新入りにルールを教えたりアドバイスをすることなど、自分の存在意義を感じることができていました。

仮釈放後にアパートと仕事が用意されていることは一見手厚い支援に感じられました。

釈放後は家族や知り合いを頼って自分で何とかするものだと思っていました。

しかし、誰もいない部屋で1人で過ごし、仕事では自分よりも若い職員に偉そうな態度を取られて自尊心を傷つけられました。

生きているというより、世間の憐れみで生かされている状態です。

相談する相手や冗談を言って笑い合える相手はだれもいません。

孤独の中で自分は存在しているのかわからなくなります。

ブルックスが泣いている場面は全くありませんでした。

感情を全く顔に出さず、言葉にも出さず、絶望して頭が空っぽになり何も考えられなくなっていました。

最後にやっと思い立ったことは、この絶望を終わらせることでした。

ブルックスが自殺した際に「BROOKS WAS HERE(ブルックス、ここにありき)」とアパートの壁に彫ったのは「自分はここにいるよ!」ということを強くアピールしたかったのだと感じました。

レッドが言った言葉で

「あの塀を見ろよ。最初は憎しみ。しだいに慣れ。長い月日の間に頼るようになる。”施設慣れ”さ。」

映画の中でこの台詞に衝撃を受けました。

最初は塀を見る度に悲しみや怒りを感じ、当たるものもないので塀と自分の境遇を憎み、塀の外に1日でも早く出ることを考えたでしょう。

それが次第に塀に守られているように感じるようになりました。

慣れてしまうとそこから環境を変えるのは恐怖でしかありません。

私たちでも仕事や引っ越しで環境が変わることで恐怖やストレスを強く感じます。

いつか環境を変えなければならないとわかっている場合は慣れてしまう前に行動するべきです。

仮釈放を言い渡された時は、もしかしたら刑務所に収容された時と変わらないぐらいに絶望したのかもしれません。

一体どうやってこれから生きていけばいいのかと不安に押し潰されそうになっていました。

主人公のアンディは無実の罪で刑務所に収容されました。

それでも希望を持ち続け、図書室の改善を行うことで受刑者たちの環境を改善したり、若者に勉強を教えて社会復帰の手伝いをしたり終始前向きな行動を取っていました。

最後には脱獄に成功し、新しい名前と人生を手に入れ、大親友のレッドと希望に満ちた人生を歩んで行く姿が描かれていました。

希望を見失わず前進して行ったアンディと絶望と悲しみで最後を迎えたブルックスの人生が対照的でした。

映画を見終わってアンディよりもブルックスのことが心に残りました。

刑務所の中であってもブルックスにとっては安心できる生活の場になっていたのだと思います。

対照的な2人の人生を味わえる素晴らしい映画でした。

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