本人に関わることができる親族がいない場合に財産管理などを行ってもらえる成年後見制度があります。
成年後見制度とは認知症や知的障害、精神障害などにより自己で判断するのが難しい方を支援する国の制度です。
精神科病院で精神保健福祉士として従事していた頃は成年後見制度を利用している患者さんはごく数人でした。
それは、病院の方で金銭管理を行なっていたからだと思います。
また、精神を患っていても自分の意思を示せる方が多く、退院先の希望を確認しながら一緒に社会復帰に向けて進めていくことができました。
現在、私は介護老人保健施設(老健)で社会福祉士として従事しています。
私が勤める老健では保証人となるご家族がいることが申し込み条件の1つになっています。
ご家族がいない場合やご家族がいても認知症などで保証人としての役割が果たせない場合は成年後見人制度を利用していることが条件になります。
私が担当していた利用者さんの奥さんが突然連絡が取れなくなりました。
自宅に行っても不在で心配していたところに、奥さんが入院している病院から当施設に連絡がありました。
奥さんの退院許可が出たのですが、自宅に帰れる程、身体能力は回復していませんでした。
奥さんも当施設に入所することになり、夫婦共に私が担当することになりました。
お子さんがいなくて、他にも頼れる親族がいない状態でした。
保証人をどうするか?
となった時に成年後見制度を利用することにしました。
成年後見の活動をしている行政書士さんに手続きと成年後見人をお願いしました。
この行政書士さんは介護保険制度や老健のこともよく理解されており非常に助かりました。
以前、他の利用者さんのケースで弁護士さんに「私は財産管理だけで他のことはわかりません」とはっきり言われて困ったことがあります。
成年後見人の役割は、大きく“財産管理”と“身上監護”の2つに分けられます。
身上監護は本人にとっていい環境を整えることなので、施設入所の手続きや入所中の相談、老健からの退所支援も含まれます。
この弁護士さんにも身上監護の役割があったのですが、老健のことを理解してもらえず残念でした。
成年後見の申し立てには医師の診断書が必要になります。
施設医師は「精神科の専門医でなければ作成できないのでは?」と言っていましたが、医師であれば専門の科は関係なく、施設医師でも作成できます。
今までの経過、家庭的・社会的状況の情報を記入する「本人情報シート」はご本人を担当する社会福祉士として私が作成しました。
「本人情報シート」は医師の診断書作成時の補助資料だけでなく、家庭裁判所の判断にも参考にされます。
医師の診断書、申立書、戸籍謄本など必要書類を揃え、家庭裁判所に申し立てを行います。
家庭裁判所に出向き面談し、調査、審判を経て成年後見制度利用開始となります。
成年後見人は医療行為に対する判断はできません。
最終的に医療行為を受けることについては本人が同意する必要があります。
診察を受ける、検査を受けるという軽微な医療行為については成年後見人にも同意権があると考えられていますが、手術などを行うことについては成年後見人は同意権がないとされています。
本人には心肺停止時等、緊急時の対応で延命処置をするのか、しないか事前に確認しておく必要があります。
夫婦のみの世帯や単身世帯が増えている状況から今後、成年後見制度の利用が増えていくように感じます。
社会福祉士として成年後見制度の利用案内、手続きの手伝いなど支援していきたいと思います。
コメント