大学の授業で精神保健福祉士になるために精神医学を学んでいました。
講義で「自分が悪いことをしていることが理解できない人たちがいる。」ということを聞きました。
また障害者福祉論の講義では、「ボーダーラインの人は生きづらい。知的障害でもない普通の状態でもない。福祉サービスを利用することができず、だからといって1人で生活をしていくのは困難な状態の人たちがいる」ということを学びました。
本屋で「ケーキの切れない非行少年たち」(新潮新書)という本を見つけたときに、15年前、大学生の頃に学んだ内容を思い出しました。
この本は非行少年には発達障害や知的障害をもっている場合が多く「ケーキを等分に切る」ことすらできない、そのような非行少年たちを社会生活で困らないように指導していく方法が公開されています。
大学の講義で先生が話されていた”ボーダーラインの人”とは”軽度の知的障害をもっている人”のことです。
軽度の知識障害をもっている人たちが生きやすくなるにはどのような支援が必要か学びたいと思いこの本を購入しました。
現在、知的障害者の定義はおおよそIQ70未満で社会性に障害があることとなっています。
しかし、1950年代の定義は「IQ85未満」でした。
普通に生活を送る上でIQが100ないとしんどいと言われています。
IQ85以下になると相当な生きづらさを感じているのかもしれません。
生きづらい状態なのに支援がないと、どうしたらいいかわからず犯罪を犯してしまう可能性があります。
1番の問題はその生きづらさを周囲に気づいてもらえないということです。
周囲から見ると軽度の知的障害者は日常生活を送る上では仕事をしたり、運転免許証を持っていたりと健常の人たちと何ら変わりないのです。
そのため、周囲に気づかれることなく生活しており、何か問題を起こした時にやっと気づかれるという状態です。
私が小学生の頃は”発達障害”という障害はあまり知られていなかったように思います。
今から考えると確かに「何度注意されてもわからない」「いつも1人でいる」「簡単な問題が理解できない」状態で自分に腹を立てて机を叩いている男の子がいたのを覚えています。
もしかすると発達障害か軽度の知的障害をもっていたのかもしれません。
今、あの男の子がどのように生活しているのか、支援をちゃんと受けられているのか気になります。
少年院に送られてくる少年たちも小学2年生頃から集団行動ができない、忘れ物が多い、集中できないといったサインが出され始めていました。
子どもの問題を理解しようとしない親に悩まされている学校の先生も多くいます。
自分の子どもが問題を起こした時でも、子どもが悪いのではなく相手が悪いと主張して、問題に向き合い、理解しようとしないのです。
親にも気づかれず、そのまま学校を卒業すると社会に出てからも支援と繋がるのが難しく、仕事をしても続かない、対人関係が上手くいかないという問題もあり引きこもってしまいます。
そうなると社会からも気づかれなくなってしまいます。
知的障害や発達障害をもち、問題行動を繰り返す場合は、投薬治療といった対症療法しかなく、根本的に治す事は難しいとされています。
「褒める」「話を聞く」という支援は、子どもの気持ちを受け止めて落ち着かせるには効果がありますが根本的な解決策にはなりません。
困っている子どもたちには社会面(問題解決能力と感情コントロール)、学習面(見る力、聞く力、想像する力)、身体面(身体的不器用さの改善)の3支援が必要です。
この本では、認知機能向上への支援として有効な「コグトレ(認知機能強化トレーニング)」を紹介しています。
複数の絵の中から同じ絵を2枚見つけたり、バラバラのイラストをストーリーを考えて並べ替える課題を解いていきます。
学校教育で授業を止めて取り入れることが難しくても、朝の会や帰りの会の1日5分間だけでも実施できれば効果を得ることができます。
困っている子どもたちに早期に気づき、支援を行うためには、毎日通い、かなりの時間を過ごす学校で新しい視点をもった教育を実施していくことが求められます。
非行少年を教育していくことよりも、非行化が心配される子どもたちに早く気づき支援に繋げていくことが重要だと学びました。
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